紙の中


 ゼンリンの住宅地図、というのをご存知ですか?
 配達の業者や新聞屋さんには、必要な地図。でも一般の方は馴染み薄いのではないでしょうか。

 本屋さんでも売ってますが、たいていはその場でのぞけないように、ビニールに入れられています。図書館にもありますが、奥に保管されていて貸し出しはしてくれません。コピーもさせてもらえません。申し出て、わざわざ出してきてもらって、館内での閲覧のみが、許可されます。なぜか?

 非常に高価です。私は、一万円近く出して、購入しました。人口が多い大都市だと、数万円します。なぜでしょうか?

 製作に膨大な手間ひまが費やされている地図、だから。それもあるでしょう。でも私はこう思います。この地図の中に、みなさんが、みなさんの生活がとじられているから、だと。

 ほら・・・

 区画が正確に縮小されて、その区画には、名前も記入されています。マンションや団地だと、一人ひとりの名前まで書かれていませんが、一戸建てに住む人の名前は、しっかりと記されています。

 不思議な気がしませんか?あなたのお住まいが小さく小さくなって、表札のように名前も記入されて、この地図の中にあるのです。

 
 私は、牛乳宅配の新規のお客様の家を、今日一軒一軒調べました。
 「あった・・・ああ、ここだ・・・あったあった・・・」
 見つけたお客様のお住まいを、赤ペンで囲む。そして次の家を、指先でなぞって、紙の上に探す・・・

 不思議になりませんか?ひょっとしたら、あなたのお住まいが紙の中で、誰かににらまれて、ペンで印を付けられてるかもしれないんですよ。

 私は、印をつけたこの地図を持って、町に出た。