兄は私に、孤独とは何か、絶望とは何か、を教えてくれた。
 本物の孤独と絶望は、砂漠の真ん中に放置され、そのうえ周囲を、白いコンクリートで囲まれたような、狂気の世界だ。
 本当の孤独と絶望は、そんなに甘っちょろいものじゃあない。


 私は、そんな兄のようになりたくないという、悪魔的な思想の持ち主だ。だから、病院に行かずに、会社を辞めて、極限まで人との接触を拒んだ。そうして、自分を守っている。

 駅に吊るされている病院の看板の文句は、ほとんどが私に当てはまる。だけど、兄に続いて私も・・・と両親に思わせるのが怖くて、私は逃げた。

 
 それでいいんだ。今のままで私は、孤独と絶望に押し潰されない自信があるから。本物の孤独と絶望の姿を見たから、私は、壊れないで、自分を守ることができる。ちょっとづつ、這いつくばりながら、進むことができる。