ちびまる子ちゃんが教えてくれた生命
私は時々、近くのお寺に行って、散歩したり手を合わせたりする。大きな木があったり古い石柱があったりして、落ち着くのだ。ただし、それだけだ。何か、大いなるものをあがめる、という気持ちではない。
兎角私は、実質的な言葉や行動には感謝するが、見えないものへの感謝はできない男だ。
「あなたより不幸な人が世の中にはたくさんいるんだから、与えられた命に感謝して生きなさい。いつも、生命に感謝しなさい」
いつも言い聞かされてきた。母親、父親、先生・・・。本当に、そうだと思う。しかし私にとっては、生命への感謝より、降りかかってくるイジメから抜け出すほうが大事だった。
そして、感謝できない自分自身を、自分で責めた。とんでもない人間だと。だからイジメられるんだ・・・
いつか聞いたことがある。冬場に手先や足先が冷たくなるのは、生命維持の為なんだと。血液が心臓のある体幹部にあつまるため、手先足先が冷えるのだと。それを聞いたとき私は、生命にたいしてゾッとしたのだ。
人間の手足を切り捨ててでも、生き残ろうとする、生命。
そして生命は、自ら命を絶とうとする人間には、冷酷だ。せっかく与えてやった命を、粗末にする愚か者め。そういいながら、ビルから飛び降りる人を、救ってくれはしない。
半分ノイローゼが続いた時期があったが、そんな私を助けてくれたのは、アニメ「ちびまる子ちゃん」の、こんな決めセリフだった。
「あたしゃにゃあ・・・無理だね」
私は思わず、こぶしを握り締めて笑ってしまった。そうだ。無理無理。ただでさえ、周囲に愛想笑い浮かべながら、働いているのに、何で生命にまで感謝しなきゃなんないんだ。もう疲れたよ。無理だ無理だ。
「オレには、無理だね」
そして、こんな風に思うようにした。私は私の肉体と心を、生命に貸してやってるんだ。だから、
だから、私の肉体と心を、大切にあつかえ。それと、
私の家族の肉体と心も、大切にあつかえ。まだだ、
私の大事な人たちの肉体と心も、大切にあつかえ。
大切にあつかわないと、お前を許さない。
生命に対して、こう宣言した。そしたら、解けるように気持ちが楽になったのだ。それから不思議と、人にも優しくなれた。
なんてこと考えやがる・・・そう思われたってしょうがない。これが私の、生きるモチベーションなんだから。