竿を出します。それと、歩きます。

 釣りの師匠から、そろそろ釣れる時期になってきたから、来週あたり海に行こうか・・・という話になっている。

 実は今週、行く予定だったのだが、急に寒くなったりして中止になった。中止になった時ずいぶんと、ホッとした。

 五月の連休に毎年恒例になっている、四国八十八ヶ所の歩き遍路。今年はどうしようか、迷っていた。結局、行くことになっているが、かなり迷った。海沿いの道を歩くことに、気が乗らなかったのだ。

 海を見ることがイヤだった。波の音や潮風の匂いを想像すると、気分が悪くなっていたから。

 『お前にそんな、気を重くするような資格があるの?何を苦しんだというの?何を苦しんでいるというの?ちょっと、甘ったれてるんじゃない?』

 そんな心の声がずっとしていた。それがよけいに、しんどかった。

 でも昨日、釣りに行くことも、遍路に行くことも、吹っ切れさせてくれる映像を見た。

 天皇皇后両陛下が、茨城県の海岸から、海に向かって黙礼をしているニュースを見たのだ。

 ・・・勇気が出た。本当に海を見るのがつらいのは、お前じゃないはずだ。そう思えた。

 竿を出そう。そして釣った魚を、精一杯料理して食べるのだ。それが釣り師のやるべき事。

 遍路に行こう。海沿いの道を、精一杯歩こう。それがお遍路のやるべき事だ。


 竿を出します。そして、歩きます。