お遍路のこと⑤・・・詠む

 種田山頭火、という俳句人が、戦前にお遍路をしていて有名なようです。山頭火が詠んだ句が、へんろ道に石碑に刻まれたりしています。一方で、世間的には有名でない俳句人が、地元のお宿の人に知られていたりします。



 室戸岬の民宿の女将さんに、その人の句集を見せてもらいました。句集といっても、その人がノートに書き連ねただけのものです。ボロボロのノートに句がいっぱいになったら、世話になった宿に置いていくらしい。女将さんは、

 「山頭火よりも人間くさい句で、好きだ」

 とか言って、大切に保存していました。



 その人は、大阪の釜ヶ崎という日雇い労働者街で傷害事件(といっても、労働者同士の喧嘩程度ですが)を起こし、四国に逃げてきて名前を隠して、お遍路をしていたのです。そして、俳句を詠み続けていたのだそうな。その人も、前に書いた鈴木さん同様、たまたま映ったテレビが元で、捕まったのだそうですが、宿の女将さんいわく、

 「八十歳も超えてたから、捕まったほうが良かった。警察にお世話になるほうが、医者にもかかれる」

 なのだそうで、ずいぶんと好感をもたれる人だったようです。



 しかし、そうした流れ着いてくるお遍路にたいして、宿の女将さんは、

 「あまり関わりたくないような連中も多い」

 といいます・・・