片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

お遍路のこと⑦・・・はさまる

 四国には、八十八ヶ所のお寺の他に、 『別格二十霊場 があって、二十のお寺をお遍路さんが参拝しています。八十八ヶ所とあわせて百八ヶ所まわる人もいます。達成すると、人間の百八の煩悩が消える・・・といわれています。


別格20霊場マップ


 別格第三番霊場・慈眼寺、というお寺に、穴禅定とよばれる鍾乳洞があるのです。鍾乳洞の奥に観音様が奉られていて、そこを目指すのです。細い細い細〜い洞穴で、上下差もかなりあります。


弘法大師空海修行の地・穴禅定(あなぜんじょう)の寺 慈眼寺(じげんじ)


 その鍾乳洞を先導する人は、なんと八十代のお婆さん(今は、お弟子さんが跡を継いでいます)ですが、足腰の身軽さは衝撃的です。そのお婆さんが言う通りにしないと、生きて帰ってこれません。
 「はい、右の肩を下げてえっ」
 「ここで腰を屈めて左の肩を上げてえっ」

 こんな細かいことを指示するのですけど、言われるとおりしないと、本当に岩の間に挟まってしまうのです。




 それだけ狭い場所ですから、当然、無理な人もいます。体の大きな・・・まあ、お腹の出た人(^^;)・・・ですね。
 
 「おたくさんは、ちょっとやめといた方がいいですねえ」

 お婆さんにそう言われ、カッとなった殿方がいました。ご夫婦で参られてるご主人の方です。お仕事を定年されたぐらいの年代の男性に見えました。何を言うか、この婆さんは。・・・ってな具合で、とめる奥さんを叱り飛ばして、けっきょく鍾乳洞に入ることになったのです。




 そして案の定、岩の間に挟まり、にっちもさっちも行かなくなってしまいました。岩から抜け出て生還するのに、一時間は掛かったのではないでしょうか?




 素直に、先導のお婆さんを言うことを聞いてればよかったのですが、でも・・・こんな頑固な男たちがいたから、今の日本があるんだと、私は思ったりします。定年後にまで頑固を通して恥をかくのは、自分自身のことだから別にいいのです。
 



 高度成長の果てに、無気力な若者が出現したというのは、私の世代に多い。そうかもしれないけど、違う気もする。