ニンに合わない
札幌放送局制作、
FMシアター、 『ニンに合わない』
かけだしの落語家、ツバメ屋ぶんた。先輩落語家の菊介(きくすけ)師匠からの誘いで、北海道の地方巡業に同行することになりました。そこは、実はぶんたの生まれ故郷。客席に父親が来ていることに気づき、ぶんたは話のリズムを崩してしまいます。ぶんたは父親に放たれた言葉を思い出したのです。
「お前なんか何やっても駄目だ」
「お前なんか生まれてこなけりゃ良かったんだ」
ぶんたと父親の中は険悪で、ぶんたは家を飛び出して落語家になったのです。
ところで、菊介師匠はお姉ぇキャラでテレビに出ています。
「そんなのぉ、あたしのニンに合わないわよぉ」
菊介師匠が言ったこの言葉。
柄にもない。
身分相応でない。
・・・こうした意味らしい。
ところが、菊介師匠はいざ寄席の舞台に座るとお姉ぇ言葉が消えて、古典落語の世界を創り出す。そうかと思えば、地方巡業バージョンの土地ネタを絡めて、伝統の古典を壊してしまう。古典を愛するぶんたには訳がわからなくなります。
寄席の後、ぶんたは菊介師匠にバーに連れて行かれました。
「あたしもねぇ。昔、父親に、今でいう虐待されててねぇ・・・」
「このキャラでしょお。師匠から破門されかけて落語をやめようかと考えたこともあったわぁ。その時に、あんたの師匠が助けてくれたのよぉ。売れなきゃしょうがねえんだ。何したって構やしねえよ・・・っていってくれてさぁ」
ぶんたはその夜、少しだけ父親との関係を考えたのです。
まだ許すことはできなかったのですが、もちろん・・・