片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

・・・前へっ! 最終回

 二度のアンコール、そしてライブ終了。
 ゴルゴさんが 『どや顔』 で私に近づいてきました。





 「ええ、良かったですよ。私が想像していたのとは、違いましたよ」





 私の言葉に、ゴルゴさんは満足げにうなずいたのです。
 そして・・・





 「この後、サイン会があるんですけどね。私は残りますが、〇〇さんはどうしますか?」





 当然ですが、私は「帰ります」・・・と返答しました。「それじゃあ・・・」と、背を向けるゴルゴさんのピンクのTシャツの大きな背中には、







 「ふんわりふわふわF香 〜俺の嫁〜」






 ・・・の文字が、力強くおどっていました。







 私はライブハウスを出て、大阪駅に向かいました。夜の大都会のネオンと人の波。まるで命を感じさせない。
 ゴルゴさんの話によると、地下アイドルグループ〇〇〇の追っかけのために、大学を中退した若者もいるらしい。東京沖縄、どこへでも追っかけていく。その予算はどこから算出しているのか?
 どう見てもオッサンのファンは、家に帰るとどんな立場なのか?会社では?
 彼らの狂ったような姿と、ライブハウスのスピーカの大音響が重なりました。あの瞬間、彼らは生きていた。命を感じた。そこには、地響きのようなベース音が轟いていた。
 ドンッ、ドンッ、ドンッ・・・ 




 森羅万象。そこには必ず、メトロノームのように正確なリズムベースがあるのではないか?
 その正確さの中で命は輝く。
 そしてリズムが狂う時、異変が起こるのか?
 大都会の喧騒には、そんなベース音がない。だから虚しさとけだるさがまん延している。
 欠陥がない人間なんていない。だけど、どんな精密機械よりも正確無比な心臓が、命のベース音なる鼓動を、打ち続けるっ!!
 ドンッ、ドンッ、ドンッ・・・ 
 そしてそのリズムが狂う時・・・








 
 翌日、ゴルゴさんからメールが来ました。




 「握手会に並んで、F香ちゃんと二分間、話すことができました」




 地下アイドルの握手会は、メジャーアイドルと違って、一人二分という長い持ち時間をもらえるらしいです。そして、「また行きませんか?」・・・と、ゴルゴさんのメールは締めくくられていました。




 しかし別に、地下アイドルでなくてもいい。




 あのライブハウスに行けば、またあの地響きに接することができましょう。どんな音楽でも演奏でも、正確なベース音がなければ成立しないでしょうから。






 そして、私はまた、こうも思うのです。










 そこのお姉さんっ!

 あなただっ!
 ビシッ!!





 あなたのベース音に接しさせてもらえませんか?





 正確に聞こえるように、



 脱いで
 いただけ
 ませんか?




 オチあんのかいっ!!( -_-)=○☆)>_<)アウッ!