片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

間じゃないんだよ。魔だ。

 もうだいぶん前の事になるけど、休みの日に車を運転していた。いきなり、子供が植木の陰から飛び出してきた。私が急ブレーキを踏んだ車は、その子供の・・・わずか手前で・・・ギリギリで止まる事ができた。

 その子供の母親だろう、女性が子供に向かって何かわめいている。私はその女性の声を聞きながら、運転席にもたれ、「アアァーッ・・・」と気の抜けた声を吐きながら、しばらく放心していた。子供はにが笑いしながら母親の元に駆けて行き、母親は私に何も言わず、ただチラッと見ただけで、子供と共に歩いて行った。

 道路にいつまでも車を停めておくわけにはいかないから、私はハンドルを握ったのだが、手が、カタカタカタ・・・と震えていた。

 少し落ちついてから、

 (あの子供はきっと、魔が差したんだ。道路に飛び出したのは、ただそれだけの事に違いない)

 と思った。間に合って良かった、と心底思った。間に合わなくてあの子供をひいていたら・・・・・・考えたくもない。

 私はその出来事がトラウマになってしまった。私は外で何か行動をおこそうとする時、ひとつ間をおいて、回りを見渡すようにしている。それから、行動にうつる。

 私の差した魔で、誰かさんの間を、魔にしたくないのだ。



 数年前、私の知っている配達員が、配達中に車にはねられて死亡した。はねたドライバーは、酒気帯び運転だった。裁判で有罪になったが、そのドライバーは最後まで自分の非を認めなかった。そのドライバーは、民事裁判をおこした。

 死んだ方が、間が悪かったのか?それとも魔が差した所に立っていたのか?ドライバーの魔は?間は?

 魔・・・私はお前を近づけないっ!