片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

ほんわか列車

 今日はひっさし振りにJR電車に乗った。仕事辞めてからJR使うことなかったんだよな。

 ホームに、お婆ちゃんと小学生の男の子が立っていた。祖母と孫だ。電車が来て、私とその男の子が、同じ車両に乗り込む。お婆ちゃんはただ、見送りにきてたんだろう。

 「ゲーム忘れたらあかんで」

 と、ドア付近に立って、ゲーム機を手に持っている男の子に話しかけている。私は座った。男の子も座った。ドアが閉まる。男の子がさっそくゲームを始める。電車が動き出す・・・そう思ったのだが・・・

 「黄色の車線よりも下がってください」

 と、アナウンスが車内に響いてくるのだ。

 「黄色の車線よりも下がってください」

 まただ。怪訝に思ってドアの方を見ると、さっきのお婆ちゃんがドアに張り付いて、孫をじっと見ているのだ。そら電車、動かせんわな。

 お婆ちゃんに気づいた孫が立ち上がった。ドアに駆け寄り、

 「おばあちゃんっ、下がってっ。黄色の線より下がってっ」

 と必死だ。だが引き下がらないお婆ちゃん。閉まっているドア越しに孫の声が聞こえないのだろう。ひょっとしたら、

 「おばあちゃんっ、黄色の線より下がってってっ」

 と、張りあげる孫の声が、

 「おばあちゃんっ、さびしいっ。おばあちゃんっ、さびしいっ」

 とでも聞こえてるのか?よけいにドアに張り付いてるのだ。

 「下がってってっ。黄色の線より下がってってっ」

 手で下がれ下がれのジェスチャーをする孫。響くアナウンス。張り付くお婆ちゃん。笑い出す乗客。



 ようやく電車が動き出した時、男の子は座ってすぐに、ゲームを始めた。
 私は電車があまり好きじゃない。人混みが苦手だから。でもたまには、電車のぶらり旅もいいか。