片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

丘の上の老夫婦

 退職した配達員から引き継いだ、牛乳を配達している一軒に、八十代の夫婦二人暮らしの家がある。その家の門扉は錆びて、ギイギイと音を立て、なかなか開かない。そしてなんと、門扉の向こうの階段は、二十段くらいあるのだ。

 おもいっきり、ノン・バリアフリーの、丘の上にある家に、老夫婦が住んでいる。

 引き継いでみて驚いたのは、その家は、牛乳を週に三十二本とっているのである。はっきり言ってこれは、とてつもなく多い本数だ。

 婆さんが言うには、爺さんと二人合わせて、一日に四本飲むのだという。それでも計算では余るだろう。詳しく聞くと、実際、余らしてるのだ。昔はちゃんと飲んだが、年取って、飲みきれなくなった。そう言う。

 こういうのを、多くとってくれるお得意さんと呼んでいいのか・・・きっと、本数を減らしてほしい、そう言いにくかったに違いない。



 スーパーで買った牛乳を持って帰るのは重い。だから宅配に世話になっている。そんな年寄りは多い。言っとくが、宅配牛乳はそれだけではない。スーパーで安売りしてるパックの牛乳とは、モノが違うんだぜいっ、おおうっ!

 ミルクカルシウムは石灰カルシウムと違って、体に吸収がされやすい。それがたっぷり、ビンに詰まってるんだいっ、べらぼうめっ!

 

 配達所との相談で、とってもらう牛乳の本数は、減る方向だ。損したと思ったら、牛乳配達道に反するぜ。お客様は、牛乳を消費するロボットじゃないってことだいっ、あほんだらっ。

 宅配牛乳は、年寄りには長寿に、子供にはスクスクと、なってもらう事を、配達しているのである。


 待ってろよ、婆さん。