ほんとうの音
名古屋放送局制作、
FMシアター、「ほんとうの音」
「死なせてくんねぇ」
今夜も、妻のちよが、夫のたみじを困らせます。
老いて、子供も独立している二人の生活。ちよが足を悪くして、ほぼ車イスの生活となって以来、たみじは酒を断ちました。掃除洗濯炊事、たみじは慣れない仕事をこなしながら、深夜になるとちよの行動に困らされるのです。
「死なせてくんねぇけぇ・・・」
たみじが酒をやめた理由は、ちよが倒れたときにすぐに車に乗せて病院に連れて行っていれば・・・そんな悔恨があるからです。
十代で、見知らぬ土地にたった一人で嫁に来てくれたちよ・・・
「生きてさえいてくれればいいんだ」
ちよを説得して、今日も夜が明けました。
でもまた明日の深夜、たみじには、夜明けまでの長い時間が待っているのです。
・・・死なせてくんねぇ・・・