片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

ヘブンズコール

FMシアター、「ヘブンズコール」





 トオルは夢を見ていました。父親が痛い痛いともがいています。


 「痛い痛い痛い痛い・・・」


 目が覚めたとき、トオルは病院のベッドにいました。建築現場で働くトオルは高所から落下し、足を骨折していたのです。意識がないまま病院に運ばれ、今、目を覚ましたとき、


 「痛い痛い痛い痛い・・・」


 夢で聞いた父親とそっくりの声が聞こえてきた。トオルの病室には、姿かたちは違えど声が父親とそっくりな、ササヤマという初老の男が先客していたのです。










 二年前の九月十六日、福島県を豪雨災害が襲いました。トオルの父親は崩れた裏山の土砂に巻き込まれ、死んでしまったのです。
 大丈夫だという父親を無理矢理にでも非難させていれば・・・
 トオルはよく現場の親方に言われていました。お前は何で危険な仕事を率先してやるんだ、と・・・
 何で・・・



 「大丈夫(でぇじょうぶ)だ、お前(おめ)のせいじゃねえ」



 トオルは父親と声がそっくりなササヤマに福島弁を教えるといって、このセリフを言わせるのです。











 ササヤマにも退院の日が来ました。ササヤマがいなくなったその日に、トオルの携帯にメッセージが入っていたのです。トオルはそのメッセージを再生しました。父親の声が入っている。ササヤマでしょうか?その声は、オレは誰誰だと、父親の名前をいうのです。ササヤマには、父親の名前を教えていない・・・
 



 「大丈夫(でぇじょうぶ)だ。お前(おめぇ)が俺の死から何かを感じとってくれれば、俺はお前(おめ)の中で生きつづけるんだ・・・」