片隅の町の幸せ

それは、あなたの小さな幸せ

仮面を脱ぐ時③ ・・・彼女の仮面・・・

 女子フィギアフリーが劇的に終了し、そして、ソチオリンピックが閉幕しました。
 戦いの最中、日本の元首相の発言が物議を醸したようです。
 森・元首相の講演での、浅田真央選手のショートプログラムの結果の感想です。


 「あの子、大事なところで必ず転ぶんだよね」




 森元首相の弁解は、発言の本意は、過酷なスケジュールを課された浅田選手を庇うものだということです。本当にそうなのかもしれませんが、森氏にはひとつ分かっていないことがあります。
 森氏の言う通り、浅田選手は何度も何度も転倒してきました。
 それは、トリプルアクセルが女子選手にとって、必ずの成功率で飛べない技だからです。
 例えていうと・・・



 世界最速の男、ウサイン・ボルトが自己記録9秒58である9秒6の壁を、必ずやぶれるか・・・





 ・・・に匹敵する険しさだと、断言したい。
 浅田選手はその困難な技に、大事なところでいつも挑んできたのです。
 そして転び続けた。







 フリーの演技が終わったあと、浅田選手は仮面を脱いだのでしょうか?
 そもそも、彼女が被り続けた仮面とは何だったのか?
 人は誰も自分の思い通りに生きていけない。それはつまり、自分で自分の仮面を作ることができないからだ。
 人はみな、他人に仮面を作られて、それを被らされる。
 浅田選手を取り巻く社会は、勝手な仮面を作りあげ、それを無理矢理彼女に被らせた。
 『代名詞』という仮面を、彼女に被らせ続けた。
 その重い鉄の仮面を素直に被り、彼女は転び続ける。




 最大のライバル、キムヨナ選手もそうかもしれない。




 本当は、キムヨナ選手は一人のスケーターとして、最難度のトリプルアクセルに挑戦したかったかもしれない。
 でも、『勝利』という仮面を被らされ続けた彼女は、挑戦をあきらめ無難なプログラムを滑り続け、そして勝ち続けた。









・・・仮面はガラスのようにもろくて壊れやすい・・・






 最後に二人とも勝利した。
 それは、被らされた仮面を脱いだからではない・・・
 他人が作り上げた仮面は、重く冷たい鉄の仮面ではなく、実はもろくて壊れやすいガラスの仮面だと証明したからだ。



  




 自分の力で簡単に、粉々にすることができる。
 浅田真央選手は、それを証明してくれた。



<終わり>